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INAX REPORT

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特集2

『見えがくれする都市』槇文彦

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都市をみる、都市を読む

槇文彦氏×内藤廣氏
『見えがくれする都市』

 「時代をつくった本」をテーマに、建築家・内藤廣氏が著者をゲストに迎え対談するシリーズ、今回は『見えがくれする都市』です。これを書くに至った経緯、メッセージしたかったことは何か…など、著者・槇文彦氏との2時間の対談です。
 東京生まれ、東京育ち、現在も東京を拠点に世界で活躍されている槇氏。「自分の郷里をどういうふうに見るか」と自らに問いかけ、あらゆるスケールが混在する東京を“奥”や“ひだ”など、独特のキーワードを交えてひも解きます。バロック的と語る「名古屋大学豊田講堂」や、その対極ともいえる「立正大学熊谷校舎」、更にこの研究が起点となった「SPAIRAL」や「ヒルサイドテラス」、「風の丘葬斎場」など、作品や写真を織り交ぜながら、建築に、そして都市に挑戦し続ける建築家・槇文彦氏に内藤氏が迫ります。

『見えがくれする都市』は1980年、鹿島出版会から発刊されています。また、現在は新装版(右)が2002年に同出版会で発刊されています。

名古屋大学豊田講堂
SPIRAL
風の丘葬斎場
ヒルサイドテラス

対談

内藤  『見えがくれする都市』が出版された1980年当時は、ちょっとかげりが見え始めた時期だとおっしゃっていましたけど、そういう中で、建築家である槇さんが東京を見てみようと思ったのは、どういうことなのでしょうか。東京というまちは、その時どういうふうに映っていたんですか?「結構、面白いじゃないか」という感じですか、それとも「こんなんじゃ、ちょっとまずい」という感じですか。
  僕は常に「面白いじゃないか」という気持と「これじゃあまずいじゃないか」という気持があるんです。これは時代によって変わっていくものではなくて、常に意識の中で並列してあるようなものだと思うんです。今でも面白いと思っているし、こんなことではまずいとも思っている。それはなぜかというと、僕自身が東京生まれだからでしょうね。同時に東京で生活し、仕事もしている。これはほとんど運命的で、急に「明後日からロンドンに住みなさい」というような外的要因もない。自分としては、これからもここに住み続けるし、仕事もし続けるだろう。例えば僕の世代では、郷里のある建築家がたくさんいました。菊竹(清訓)さん、磯崎さんが九州、黒川(紀章)さんは名古屋、大高(正人)さんは福島と、いろんな人がいろんなかたちで地方から来て、東京で仕事を始めた時代なんです。その中で、僕は東京生まれですから東京が郷里みたいなもので、「自分の郷里をどういうふうに見るか」と考えてもおかしくない。
内藤  この本にも、港区の三田界隈での子どもの頃の体験を書かれていますね。
  それはやっぱりあるんですよ。それと僕は奥野健男の『文学における原風景』が非常にショッキングだったわけです。なぜかというと、普通の人が潜在意識として持ちながら共有してきた風景について、一人の文学者が克明に書いている。われわれ建築家にとってはとても衝撃的でした。
内藤  三島由紀夫とも親交が深かった文芸評論家の奥野健男さんですね。
  そうです。彼はもう亡くなられましたけど、僕と同じジェネレーションだったんです。彼はどこに住んでいたかというと、ちょうど代官山に近い恵比寿側で、そこからよくエビスビールの、先がちょんと曲がった4本の煙突が見えたんですね。今の恵比寿ガーデンプレイスの場所ですね。
内藤  子どもの頃は、恵比寿から五反田辺りにお住まいだったんですよね。
  そうです。ですから、ちょうど同じ時期に、山手線の線路を境にしてこっち側と向こう側にいて、同じような風景を共有していたと思うんです。それがある種の同意というか、親近感を持つきっかけになっていたと思います。『記憶の形象』に書いてありますが、当時の山の手は緑が深くて茶色の塀があって、建物も木造が基本的なんです。商店街に行けば、モルタルの典型的な商店が並んでいる風景だった。そして原っぱは至るところにありまして、われわれ子どもの格好の遊び場だった。いつもそこで野球をやったりフットボールをして遊んでいた。それは奥野さんの原風景でもあるわけですが、奥野さんはその原っぱにあった小さな祠や石仏、石碑を通して土俗信仰の影が色濃く漂っていたことも指摘しているんです。そして原っぱは、都市の中で開発が遅れた単なる空き地ではなく、そこには神聖な禁忌空間もあったというわけです。

序論・コラム

 序論 建築家・早稲田大学 教授・同大学芸術学校 校長/鈴木了二氏
 コラム1 建築家・デザイナー/矢萩喜從郎氏
 コラム2 作家・地域誌編集者/森 まゆみ氏
 
 左写真上から:「名古屋大学豊田講堂」、「SPIRAL」、「風の丘葬斎場」(写真:北嶋俊治)、「ヒルサイドテラス」(写真:槇総合計画事務所)

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