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INAX REPORT

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続々モダニズムの軌跡
特集2

富田玲子+樋口裕康×古谷誠章

富田玲子、樋口裕康、古谷誠章

われわれにできることは何か。

 1996年に始まった特集「モダニズムの軌跡」の続編シリーズです。建築家・古谷誠章氏を聞き手に、今なお“時代を導く人”として建築界で活躍する建築家にスポットを当てたロングインタビューです。
 今回のゲストは象設計集団の創設者・富田玲子氏と樋口裕康氏です。両氏は1960年代に吉阪隆正氏が主宰するU研究室に所属し、1971年、大竹康市氏と共に象設計集団を設立。「名護市庁舎」を始め、「宮代町笠原小学校」など、極めてオリジナリティあふれる独自の作品を日本各地に送り出してきました。1988年には、台湾に事務所を設置。日本を問わず海外でも活躍し、冬山河計画は現在も進行中です。住宅から学校建築、庁舎に至るまで、土着的な設計手法を展開し、設計活動に取り組んできた象設計集団の1980年代から2000年に至るまでの作品の足跡を辿りながら、話を伺いました。

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名護市庁舎
宮代町笠原小学校
宜蘭県庁舎

対談

古谷|初めてやる種類の仕事の時は、議論が最も面白くなると思うんですけど、この時(宮代町笠原小学校)は地形の話以外に、学校として何か考えていたことはあるんですか?
富田|この頃、オープンスクールがちょうど流行り出した頃でね、幾つか見に行きました。でも、これじゃないな、という感じがしましたね。
古谷|いわゆる初期のオープンスクールですね。
富田|それも先生とか議員さんたちとみんなで見に行ったんですね。そうしたら、これは自分たちのまちに合わないな…という感じでね、それで“宮代型オープンスクール”の形があるのではないかと考え始めたんです。それまでは兵舎型の学校が普通だったでしょ。私たちは一見、兵舎型なんだけど、違うオープンスクールがあるような気がしたんです。やっぱり各学級がきちんとした単位になっていた方がいいなと。
樋口|僕らの原則にしている、「学校とは何か。教育の場だけじゃないだろう」という話は、真っ先にあったよね。
富田|1日中暮らしている場所だから、家みたいなものだと…。
樋口|宮代町では、まちの人たちもそう思っていたんだよ。だから、その辺の合意形成は早かった。とっても意識の高い人たちが大勢いた。
古谷|学校は生活のための場としてある、「学校はまちだ」というコンセプトだと思うんですね。そういうことが、あの当時でスッと伝わったんですか?
富田|そうなの、スッと伝わりましたね。「学校は街」、「教室はすまい」、「学校は思い出」というキーワードを、みんなで共有するようになりました。
樋口|みんな「そうだ、そうだ」って言うんだ。
古谷|行政もですか?
富田|そう。最初に頼まれた時に、教育長と町長と助役だったかしら。年配の方が3人向こうに並んでいて、こちらも3人いたんですが、いきなり「2ヵ月で図面を描いてくれ」って言われたのね。「子どもが増えちゃって、今、3つある小学校がもう満員であふれているから、すぐにつくりたい。だから2ヵ月で…」と言われて、もうびっくりしちゃってね。「描くだけなら描けるかもしれないけど、考えるとなるともう1年欲しいです」と言ったわけ。「私たちは今までの自分の歴史を考えてみると、小学校時代の思い出が一番鮮やかに出てくる。いろんなシーンをとてもよく覚えていて、楽しい時期だった。ああいう鮮烈な思い出ができるような時期に暮らす場所を、2ヵ月で考えるのは無理です」という話をしたら、だんだん、特に最年長だった教育長さんは涙を浮かべてね、「確かにそうだ」っておっしゃるの。3人共、そう思っちゃったのね。
樋口|富田さんが田んぼのあぜ道を、学校へとぼとぼと歩く話をしたんだよ。そしたら教育長が思い出してワッと泣き出すような感じだったね。それでプレハブで開校して、設計期間を1年くれた。感動的だよね(笑)。
古谷|それは素晴らしいですね。実感が込もっていたから…。
樋口|というか、ピシッと周波が合ったんだろうね。僕らもびっくりしたもん。
富田|ちょうど疎開していた小学校のことを、私は思い出したのね。みんな裸足で、朝礼の後なんか足洗い場に殺到してドロドロになったところなんて、私はすごく好きだったわけ。そういういろんな思い出が出てきてね。

本論 住まいの図書館出版局編集長、建築評論家|植田 実氏
コラム 建築家・工学博士|重村 力氏

左写真上から:「名護市庁舎」、「宮代町笠原小学校」、「宜蘭県庁舎」

   

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