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INAX REPORT

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『代謝建築論』菊竹清訓

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激動の時代が生んだ〈か・かた・かたち〉

菊竹清訓×内藤廣
代謝建築論

 「時代をつくった本」をテーマに、建築家・内藤廣氏が著者をゲストに迎え対談するシリーズ、今回は『代謝建築論』です。これを書くに至った経緯、メッセージしたかったことは何だったのか…など、著者・菊竹清訓氏との2時間の対談です。
 戦後復興期、新しい価値を生み出すべく格闘した1950年代を熱く語り始めました。独立した当初の曵家業に明け暮れた日々、やがて「スカイハウス」を建設するに至った真意、1960年の世界デザイン会議と、ルイス・カーンと夜を徹して議論した秘話。実は〈か・かた・かたち〉はノーベルプライズに触発されて立ち上げた三段階の方法論だった…など、菊竹氏は、徐々に真相を語り始めたのです。

『代謝建築論』は1969年、彰国社から発刊。現在は2008年、同社から復刻版が出ました。

スカイハウス
国立国際会館設計競技応募案
萩市民館
都城市民館
都城市民館建設当初

対談

内藤  先生はこの本で考えておられたのは、やはり、いわゆる戦前のくびきを抜けて、いわゆる高度大衆化社会とか大量消費の時代が目の前に来ていて、そこの中でどういうふうに建築の設計を方法論としてやっていけるかということだったような気がします。言ってみれば「か」が一つの高度成長時代のビジョンのようなものとして、先生の頭の中を行き来していたんじゃないかと思うんですが。
菊竹  もうちょっと深刻なものでした。つまり地主というのは、全財産を没収されて全部なくなってしまったわけです。地主の土地を農地解放してしまえば、神社も仏閣も、その他学校とか、いろんな水門だとか、そういったものは誰もお金を出す人がいないわけですよ。ということは、日本の文化をそこから突き崩しているわけです。ですから、私はマッカーサーに対して、その点では大変な反感を持っています。
内藤  土地制度というか農地制度改革に…ですね。
菊竹  はい。マッカーサーは議会に帰って「自分は農民を救った。農業を民主的にした」と証言をしていますが、間違いです。アメリカの農業は確かに移民を使ったり奴隷を使ったりしてオーナーと実際に働く小作人との間には非常に落差があったと思いますし、非人間的でもあったと思います。だけど、日本の農業には1,000年ぐらいの歴史があるわけですよ。それに、同時に仕事をしていかないと水田はやれないんです。水をどんどん灌漑させていくわけですから、極めて社会的なものなんです。ですから、私は九州の家で生活をしていた時も、地主の戦前の生活では、食事でも何でも実に粗末で、番頭さんや女中さんと一緒でした。そして、みんな仕事を割り当てられていて、地主と小作人との間に人間的な差はなく平等で、しかも非常に良い関係でずっと続いてきていたわけです。そういう農業を徹底的に壊してしまった。これは農業だけではなくて、貿易も同じなんですね。この話はまた別な時に譲りますが…。
内藤  そうすると、先生の中に基本的に怒りのようなものがずっと。
菊竹  ものすごい怒りです。(中略)
内藤  先生にしてみると、例えば60年代というのは微妙な感じですね。“一億総大衆化”といって、一方では世の中が浮かれ始めている頃ですよね。
菊竹  とんでもない。その頃は、私はとにかく自分の向かうべき道を何とかしてやり遂げることしか考えていなかったです。生活するために…。
内藤  一方は建築の設計を通して、片一方では文章をたくさん書かれていますけど、そういう言葉を通して…という気持が随分おありになったと思うんですけど。
菊竹  もう、とにかくやれることは何でもやりました。『新建築』の図面のコピーなんかも随分やりました。だからものすごく勉強になったんです。他の事務所の人たちがどんな図面を描いているのか、そこから学びました。
内藤  それは50年代ですか。
菊竹  そうです。図面をインキングしながら。

序論・コラム

 序論 建築家・伊東豊雄氏
 コラム1 建築家・西沢大良氏
 コラム2 デザイン評論家・柏木博氏
 作品は、「スカハウス」、「出雲大社庁の舎」、「館林市庁舎」、「萩市民館」、「都城市民会館」、「島根県立図書館」 が掲載されています。

左写真上から: 「スカイハウス」、「国立国際会館設計競技応募案」、「萩市民館」、「都城市民館」、「都城市民館建設当初」

※都城市民会館建設当初の写真: 建設当初は放射状に広がる梁にはカバーが付けられていましたが、いつの間にか外され、今日に至っています。
※現在解体の危機に直面しています。

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